メルマガ『精神世界の叡智』第237号 2007/09/27発行
『日本人の品格』
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★ 今週の名著 ★
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■ 日本人の品格
渡部昇一著 ベストセラーズ
『日本人の品格』
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日本人から、品格が失われつつあると言われます。
品格を保つために最も必要なものは、
『誇り』『プライド』ではないでしょうか。
プライドを持つことが、すなわち品格のある人間を
形づくる核になると言えるでしょう。
日本人としてのプライドを持ち続けるためには、
まず、日本がこれまでどのような歴史を歩み、
その中でどのような人々を生み出してきたのかを
知ることが大切です。
▼ 日本は世界で唯一のひとつの文明である
日本は、世界で唯一、「文化=文明」である国なのです。
他の文明圏とは違い、
日本だけは一文明、一国家、一言語、一歴史です。
「日本は世界的に見てもきわめて特殊な国である」
「日本は一つの文明である」
ということを知ることが、国民にプライドを
与えるのではないでしょうか。
日本人自らが、まずきちんと知ることが必要であり、
それをきちんと教えることが大切だと考えます。
▼ 日本文明の核となる「皇室」と「神社」
日本が「シナ文明」「儒教文化」ではなく、
一つの文明としてとらえる根拠として
「皇室」と「神社」の存在があるからです。
日本を、あるいは日本人を論じる際には、
皇室と神社を絡めて論じなければ成り立たないのです。
皇室の本質とは、神話時代から、こんにちまでつづく
世界で唯一の王朝であるということです。
神話の神々も、現代の皇室と連続しているということです。
日本は神話の時代がいまもなお続く
世界でも唯一の先進国であります。
神道こそ、そして神社こそ、
日本の文明であり本質なのです。
日本そのものが世界最大の文化遺産なのです。
皇室と共に神話の神様が今もなお生きている、
それが日本なのです。
▼ 神道と仏教の二つの宗教の成立
日本人は、いいものが来れば、
何でも受け入れようという精神がありました。
その最も分かりやすい例が、仏教でしょう。
これを、いいものだとして日本は受け入れることにしました。
仏教は国境を越えた大宗教であり、
日本の神道は典型的な民俗宗教であるにもかかわらず、
これが共存してしまう。
そんな国は他にありません。
日本では『神仏』とひとまとめにして言うのです。
これが日本の大きな特徴のひとつであり、
さらに言えば日本の本質を端的に表しています。
皇室、神道、日本仏教が日本文明の三代特徴であり、
お互いに関連しています。
▼ 日本の武士道精神が21世紀の世界を作った
有色人種の中で唯一、日本だけが21世紀に入る頃に、
すでに一流国に近づく存在になっていたのは、
日本に武士階級があったことに尽きます。
武士たちは剣術に長け、その上で勉強をしていますから、
瞬く間にものごとを理解する力を持っています。
日露戦争の勝利がなければ、
アメリカで黒人の人権運動が成功することもなかったでしょう。
実際に有色人種が独立するのは大東亜戦争後ですが、
その独立運動の中心になった各国のリーダーはみな、
日露戦争によって奮い立っているのです。
日本の武士がいなければ、
世界中の有色人種は、良くて使用人、
悪くて奴隷に近い存在のままだったはずです。
明治の武士が、差別なき21世紀をつくったと
言ってよいだろうと思います。
▼ 日本に武の復権が求められる
日本人の品格を取り戻すためには、
正当なる武の復権が求められると考えます。
いわば、武士の伝統の再発見です。
武の伝統を軽んじてはいけません。
日本にはかつて世界に誇るべき武の伝統がありました。
今後も国際的ビジネスの場では商人道を発揮すべきでしょう。
しかし、それも武の復権があって、
初めてバランスのとれたプライドとなり得るのです。
文・武・商の伝統に立ち返り、
日露戦争前後の日本人が抱いていた気概が再認識された時、
日本人に新しい品格が生まれるのではないかと確信しています。
▼ 日本人の美意識を形作ったのは大和言葉
日本人の美意識を形作ったのは大和言葉です。
大和言葉は、奥が深いのです。
8世紀の始めに『古事記』『日本書紀』が編纂された頃、
あるいは『万葉集』がつくられた以前から
使われていた言葉ですから、
我々の血と同様に古いものだと考えられます。
大和朝廷がつくられた頃に、
「日本人が日本語だと感じた言葉」が
大和言葉だということになります。
日本語について考える時、さらに重要なのは、
「言霊」という概念です。
言霊というのは、
日本人が最初に『古事記』や『日本書紀』をつくったとき、
「自分たちの先祖伝来の言葉として意識して来た言葉」
として定義されたものだと言えます。
▼ 日本人はもともと高いモラルを持つ国民だった
元来日本は、とても治安のいい国でした。
しかし、日本が豊かな社会になるにつれ、
道徳観が薄れ、治安は加速度的に悪化していきます。
その原因はどこにあるのかと端的に言うと、
「戦前の日本は悪かった」という意識が
戦後日本の出発点になったからです。
そして、そのきっかけとなったのが『東京裁判』です。
東京裁判とは名ばかりの占領行政措置であり、
終戦処理の一形式と呼ぶべきものでした。
裁判官はすべて交戦国の人間が努め、
中立国の人間は入っていません。
現在、世界の国際法を専門にする学者の間では、
東京裁判は無効であるというのが定説になっています。
東京裁判の狙いは、
明治以来、日本がなしてきたすべての行いを
悪だと証明することでした。
▼ 公職追放令が戦後の日本を激変させた
東京裁判では、20万5千人もの人たちに対して
公職追放令が下されました。
これは実業界にも波及し、最も悪い影響を受けたのは、
学界、言論界です。
戦前、日本のことを良く言った歴史学者、経済学者たちを一掃し、
戦前の左翼およびそのシンパが
主要大学の総長、学部長クラスの多くにポストを与えられたのです。
彼らは、戦前の日本を良く言うことは絶対にありません。
日本は駄目だと言われ続けた子どもは、
果たしてどうなるのか。
アイデンティティもプライドも持てない、
将来に希望を持てない大人になるのは、
当然のことではないでしょうか。
プライドを失うと人間はろくなことをしなくなる。
気力がなくなり、モラルも低下します。
こうなると、社会は悪いほうへと向かうものです。
「日本人ろくでなし史観」ができ上がり、
それが教育の場でも断固死守されたのです。
自国の過去に自信の持てない国民に、
品格が備わるはずはありません。
▼ 日本人の品格を取り戻すための処方箋
本来日本は、国語については断固自信を
持っていいはずなのです。
『源氏物語』を見ても、
当時最高の文明であった唐の影響をほとんど受けず、
99%大和言葉で書かれているという事実を知れば、
日本人の誇りを取り戻すことなど簡単なことでしょう。
和歌を暗記することで、
日本人の源流とでも言うべき感性が、
自ずと身につくのです。
日本人が「気負い」をなくし、自己の情緒の本然に戻る時、
つまり、魂のふるさとに回帰しようとする時、
その表現は大和言葉になるのです。
日本人の遺伝子の中に染み込んだ、
ごく自然の感覚だと言ってよいでしょう。
日本語、国語を重視する視点は、
今の日本にとって必要なことです。
言葉の裏にある歴史的背景や
日本人ならではの美意識を確認するのに、
日本語ほど最適な材料はないと思います。
それを知ることが、
日本人としての品格を取り戻すことにもつながるのです。
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■ 著者紹介 ■
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渡部昇一(わたなべ・しょういち)
昭和5年(1930)山形県生まれ。同30年上智大学大学院修士課程修了。
ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学に留学。
Dr.phil、Dr,phil.hc.専攻は英語学。上智大学教授を経て、上智大学
名誉教授。専門の英語学だけでなく、歴史、哲学、人生論など、執筆
ジャンルは幅広い。昭和51年、第24回日本エッセイストクラブ賞。
昭和60年、第1回正論大賞。
主な著書に、『英文法史』など、専門書のほか、『知的生活の方法』
『知的生活を求めて』『渡部昇一の昭和史』『頭のいい人はシンプル
に生きる』『渡部昇一の中世史入門』『中国・韓国に二度と謝らない
ための近現代史』『95歳へ!幸福な晩年を築く33の技術』など多数。
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● この本の評価 ●
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■ 日本人の品格
『日本人の品格』
■ 渡部昇一著
■ ベストセラーズ
■ 780円
★★☆☆☆ 「この本の難度」
★★★★★ 「この本のオススメ度」
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