☆クォークの謎
物質を限りなく細かくわけると、
ついに1個の原子になります。
原子はさらに「原子核」と「電子(エレクトロン・e)」で構成されていることがわかっています。
原子の大きさは1億分の1cmほどです。
原子核は、
さらにその1000分の1くらいの大きさです。
この原子核は、
プラスの電気を帯びた「陽子(プロトン・p)」と、
電荷を持たない中性の「中性子(ニュートロン・n)」とで作られています。
原子の基本的な性質を決めるのは原子核の中の陽子の数で、
これを「原子番号」と呼びます。
原子番号が一番最初の、
つまりもっとも基本的な原子と考えられるのが「水素」です(普通の水素の原子核は陽子のみです)。
宇宙で光る恒星のほとんどは水素でできています。
水素の原子核に中性子が1つ加わり、
重さが倍ほど水素原子を「重水素」といいます。
原子の多くは、
原子核の中に陽子と中性子が混在しています。
陽子と中性子の数を合わせたものを、
その原子の重さを表わす「質量数」といいます。
中性子は陽子よりわずかに重いだけの、
電荷を除いてまるで陽子と双子のような粒子です。
単独の中性子は、
15分足らずで電子と反ニュートリノを放出して陽子に変わります。
原子核から放射される電子線をベータ線と呼んだことから、
この変化を「ベータ崩壊」といいます。
電子の質量は陽子のおよそ2000分の1ほどです。
このように質量の小さい電子の仲間は、
まとめてレプトン(軽粒子)と呼ばれます。
それに対応して陽子などの仲間はバリオン(重粒子)といいます。
○陽子・中性子・電子の電荷と質量
名前 電荷 質量
陽子・p +1 938.3 MeV
中性子・n 0 939.6 MeV
電子・e -1 0.51 MeV
※ eV(電子ボルト):電子など素粒子の質量は、このエネルギーの単位で表すことが多い。
※ M(メガ) = 10の6乗
粒子加速器を使って実験を重ねるにつれ、
陽子や中性子の仲間と見られる、
寿命の短い多くの粒子がみつかりました。
そして1960年代ころから、
陽子や中性子を構成するさらに基本的な要素があるのではないかと考えられるようになりました。
この要素を「クォーク」と呼んだのは、
マレー・ゲルマンです。
いわゆるクォーク・モデルと呼ばれる理論が登場しました。
それによるとクォークは分数の電荷をもち、
グルーオン(にかわ粒子)を介して強く結びつき、
単独では決して姿を現さないということです。
○クォークの世代・電荷・質量
世代名前 電荷 質量
第1世代
アップ・u +2/3 2〜8 MeV
ダウン・d −1/3 5〜15 MeV
第2世代
ストレンジ・s −1/3 100〜300 MeV
チャーム・c +2/3 1.0〜1.6 GeV
第3世代
ボトム・b −1/3 4.1〜4.5 GeV
トップ・t +2/3 176 GeV
※ G(ギガ) = 10の12乗
さまざまな実験や理論の検証を経て、
現在、
3世代6種のクォークが知られています(表2参照)。
単独では取り出せないクォーク1個の質量を、
どのようにして測ったかは知りませんが、
理科年表に掲載されている信頼性の高い値です。
ところで陽子はアップクォーク(u)2個とダウンクォーク(d)1個からできています。
中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個でできているといわれます。
そうすると陽子の構成は、
クォークでは(uud)となり、
それぞれの質量を加え合わせると最大に見積もっても31MeVにしかなりません。
しかし実際の陽子の重さは約938MeVと、
構成要素を単純に加えたよりも30倍以上重くなっています。
エネルギーと質量は同等のものといわれます。
3つのクォークが結びつくときに、
ものすごいエネルギーがかわっているのかもしれません。
この不思議を説明できる人は、
世界中にまだいないそうです。
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