地球危機回避のパラダイム
西本安範 (第20回日本環境学会研究発表会)
●グローバル・フォーラム京都会議(1993年4月・京都国際会議場)
●地球環境の破壊は、
少々の配慮や努力ではどうしようもないレベルに達している。
もはや科学技術だけでは解決できない。
人間は飽くなき欲望と進歩に向けて突っ走ってきた結果、
物質的には豊かになったが、
神は影を薄くし、
精神は貧しくなった。
(国際高等研究所所長・岡本道雄)
地球環境の改善には代替えフロンなど科学技術の開発も重要であるが、
それだけでは不十分である。
より重要なのは心の問題であり、
哲学・宗教との協力が必要となる。
今最も危険なのは心の汚染であり、
価値の転換は不可欠である。
(日本学術会議会長・近藤次郎)
●アジア地域で進められている都市化と工業化による急激な経済発展は、
日本の戦後の高度成長と同じもので、
公害と資源の枯渇をもたらすことになる。
●地球環境破壊の多くは、
過剰な消費と廃棄が原因であり、
その責任の大部分が先進国であることは紛れもない事実である。
有限の地球で無限の消費と廃棄を続けることは、
あらゆる点で不可能で、
拡大経済も継続不可能である。
現状の先進国の社会を転換しなければ、
生存環境の破綻は避けられない。
●国家も企業も個人も、
誰もが他の誰よりも多くのものを求めるという競走をしており、
消費を煽って製品を買わせ、
新製品を投入し、
以前の商品を陳腐化させて新製品を買わせる消費文明にあり、
社会システム全体が大量消費と大量廃棄を推進するようにできている。
●経済はGNPを増大させることを目的としており、
このGNPは生産・販売・廃棄によって増大するが、
それに伴う環境破壊や資源の枯渇を考慮しない。
GNPは全ての資源を消費し尽くしたとき最大となり、
現在はその末期状態にある。
●日本は食糧と森林資源の70%、
エネルギーと鉱物資源の95%以上を外国からの輸入に頼らなければ生きていけないという、
他に類を見ない最貧国になっているにもかかわらず、
不況対策として、
景気刺激のための大型公共投資などの必要性が大合唱され、
永続可能な社会にするための残されたチャンスを確実に減らしている。
●先進国の1人は、
貧しい国の100人分の消費と廃棄を続けている。
これだけでも十分深刻な事態であるが、
貧しい45億人の人々が、
先進国に追いつこうと必死で破壊を加速していることが、
今後、
事態をいっそう深刻にしていくだろう。
警報の鳴り響く「宇宙船地球号」で、
いつまで酒盛りが続けられるのだろうか。
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