「万病の元は宿便であると聞いたことがありますが、
これについてお話ください。」
「便秘というのは良く聞きますが、
宿便というのは一般的にはあまり聞きなれないですね。
宿便についてあなたはどのように聞いていますか。」
「断食をしたらタールのようなものや黒い便が洗面器いっぱいほども出ることがあるそうです。
それが宿便と言われるものだと聞きました。」
「断食というと、
だんだん食事を減らしていって、
ついには水だけ飲んで5日から10日ほどを過ごし、
この完全断食と同じ日にちくらいをかけて元の食事量に復食するというものですね。」
「そうです。
水だけ飲んでいるのに大量の便が出るので、
それは長年腸内に宿っていた便だということになっていて、
こんな汚い物が腸壁にヘばりついていれば、
栄養分を吸収する腸壁にある絨毛(じゅうもう)を覆い尽くして、
その機能を奪い去ってしまうと考えられています。
それにその宿便が異常腐敗して出来る毒素成分を吸収してしまい病気になるとも考えられています。」
「宿便が腸壁にへばりついていて、
栄養分の吸収を邪魔し、
その上腐敗毒素をまき散らすというのですね。」
「そうです。
だから断食の目的はこの宿便を出すことだということになっています。
宿便が出るとたいていの病気が治るようですね。」
「だから、
宿便が万病の元だというのですね。」
「植物は土中の根毛から栄養分を吸収しているように、
動物は腸内の絨毛から栄養分を吸収しています。
だから、
植物は根毛のところに異常があれば枯れてしまうように、
人間も腸内の絨毛のところに異常があれば病気になり、
死に至ることもあるのです。
ですから、
腸内はいつもきれいにしておかなければならないのは理解できます。
便秘が体に悪いのはその辺のことを考えるともっともだと言えます。」
「宿便とは便秘の延長上にあるもので、
それらの古便が長い間腸壁や腸のヒダの間にこびりついたり、
はまり込んだりしているものとの考えですね。」
「断食によって、
水だけで何も食べないのに大量の便が出ることがあるということは
腸壁にへばりついていた宿便が出てきたとしか考えられないのではありませんか。」
「そうでしょうか。
病気は腸壁にへばりついている宿便が原因だとすれば、
腸の切開手術をした場合宿便まみれの腸壁をその執刀医は見ているはずですが、
そんな報告はどこにもありません。
なにしろ、
医学用語辞典には宿便という文字がないくらいですから、
そんな所見は報告されるはずもないのです。」
「えっつ。
宿便という用語は医学辞書にないのですか。」
「解剖学的には存在しないからでしょうね。」
「宿便は解剖学的に存在しないのですか。
では、
断食したら出てくる便は何処にあったものですか。」
「便というのは食べ物の残さや体中の使用済み老廃物であるはずです。
ですから大量の便が出るということは食物に替わるものを消化してエネルギーを作ったことになり、
その残さや老廃物を便として出したことになります。」
「食物に替わるものとは何ですか。」
「断食すると痩せますよね。
水しか飲まないのだから痩せるに決まっている。
ということは自身の肉を食べていることではありませんか。」
「それはそうに違いありません。」
「そうでしょう。
断食した時は純粋な肉食をしているのです。
だから、
その時の便はタールのように黒いことが多いのです。
断食でなくても肉だけ食べて御覧なさい。
黒い便が出ますよ。」
「断食すると大量に出る黒っぽい便は自分の肉を食べて出来た物だったんですね。
それではこの便が出るといろいろな病気が治るのはどのように考えればいいでしょうか。」
「たとえば、
あなたが雪原の中のごみだらけの小屋にいて暖をとらねばならないのに薪がないとしますとどうしますか。」
「ごみやあまり必要でない物から先に燃やして暖をとります。」
「誰でも必要性の少ない物から燃やしていくはずです。
それと同じようにわれわれの肉体においても外から食料補給がない場合、
傷ついた細胞や病気に罹っている細胞から食べるのです。
そうすると傷ついた細胞や病弱な細胞は淘汰され、
全体として若返り、
病気も治るのです。」
「断食すると痩せますが、
それは自分で細胞を食べたからであり、
そのときに出る便が自分の体を食べて出来た物だというのですね。
言われてみればその通りだと納得できますね。
しかし、
傷ついた細胞や病気に罹っている細胞から食べるというのは余りに都合が良過ぎませんか。」
「生命の構造は生き物にとって、
もっとも都合良く出来ているのです。
そうでなければ何十年も何千年も生きていけるはずがありません。」
「それならば、
どうして病気になったり、
事故にあったり、
喧嘩したり、
戦争したりするのでしょうか。」
「それは人間の無知や傲慢から来るもので、
生き物にとってもっとも都合が良い生活法から逸脱したことをしたからにほかなりません。」
「病気になる人間の無知や傲慢とは具体的にどんなことを言うのでしょうか。」
「食べ過ぎ。
これに尽きます。」
「食べ過ぎなければ病気になりませんか。」
「なりません。」
「どんな病気にもなりませんか。」
「少なくとも、
断食で治るような病気にはなりません。」
「ガンや心臓病、
脳血管障害、
糖尿病、
通風など最近流行りの病気はどうですか。」
「それらはすべて食べ過ぎ、
飲みすぎからくる病気です。
何しろ、
食べ物が血となり肉となるのですから必要以上に食べたら、
余分なものは体重を増やし、
体のお荷物になります。
荷物を持ち過ぎたら動けなくなるのと同じように、
食べ過ぎたり、
飲み過ぎたりすると余分な物が体のあちこちに溜まって内臓、
臓器の働きを鈍らせ、
いろいろな病気にまで発展するのです。」
「食べ過ぎたくらいでそんなに重い病気になるのですか。」
「何事も過ぎたらいけません。
過ぎた分だけ体のお荷物になるのです。
食欲に任せて食べなければ生きている価値がないなどといって食べていると、
食べ過ぎに気付かないで、
その食事量に慣れてしまい、
そんな食事が当たり前になると、
どんどん余分なものが溜まってきて、
気付いたときには取り返しのつかないことになるのです。」
「食事の量だけが問題ですか。」
「そうです。
量が問題です。
今の日本人においては量こそが問題なのです。
以前にはたんぱく質が足りないとか、
カルシュウムが必要とか言う時代もありましたが、
食糧が豊かになった今日においてはそう言う心配はいりません。」
「そうは言っても、
若者などは偏った食事をしている場合があるようですから、
質の問題も注意しなければいけないのではないですか。」
「それはそうかもしれませんが、
質の問題は量の問題に比べれば問題にならないくらい小さなものになります。
それに、
生き物は原子転換能力を持っていますから、
あらゆる物を自ら創ることが出来るということも考えにいれるとなおさら、
質より量の問題が重要になるのです。」
「原子転換ということになると、
食べ物が血となり肉となる場所が問題ですがその辺のところはどうでしょうか。」
「いろいろな酵素によって消化され、
または細分化された食物は小腸の所まで来ると、
腸内細菌によっていろいろな物に転換され、
腸壁を通過する過程で血となり、
その血が肉となるのです。」
「便はどの段階で作られるのでしょうか。」
「腸内細菌が働いている小腸で出来るということになります。
だから便のほとんどは腸内細菌の死骸と言ってもいいでしょう。」
「便のほとんどが腸内細菌の死骸だということは、
私たちが食べたものを腸内細菌が食べて菌だらけになるというイメージを持ってもいいのでしょうか。」
「そうですね。
腸内に送り込まれたドロドロになった食物を、
腸内細菌が食べることによって増殖し、
その過程で代謝産物を排出し、
その役割を終えると寿命をまっとうして死骸となります。
私たちの腸は、
この細菌が排出した代謝産物と菌体として蓄えた菌体成分を、
腸壁に密生している絨毛から吸収しているのです。」
「便は、
菌の代謝産物と菌体成分の内から、
人体に必要なものを吸収した残りだと言うわけですね。」
「その通りです。
ですから、
私たちの食事というのは腸内細菌の餌を腸まで送り込む作業だといえます。」
「それならば、
殺菌剤としての食品添加物が入ったものなどは腸内細菌の餌としては不適当ですね。」
「そのようなことに気付けば病気や戦争もなくなるのです。」
「自分が住んでいる近郊でその季節に収穫された作物を、
自然に料理して、
少食を心がけて、
有り難く頂いていれば、
健康と平和を享受しながら生きていけるというわけですね。」
|