私は断食をする。
これまで30日間の断食を2回と40日間の断食を1度やったことがある。
1週間や2週間の断食は数えきれないぐらいやってきた。
断食は自然に覚えた。
ニューヨークに住んでいた時、
私は乞食同然だった。
ストリートミュージシャンで街角に立っていたが、
まるでお金にならなかった。
ハーレムの安アパートに間借りをして、
結局、3ヶ月家賃を滞納したまま、
ボストンに夜逃げをした。
金が稼げないから、
食い物が買えない。
少しお金になった時にはジャガイモを買った。
1ドルで5個ぐらい買えたと思う。
それを茹でて塩をつけて食べる。
夏や秋口までは良かったが、
ハロウィンが終わり11月に入ると街角に立つのが辛くなってくる。
着るものも持っていないから、
よけいに寒さが身にしみた。
一日中、
ワシントン・スクエアーに立って演奏していても、
1ドルにも満たない日もある。
そういう時は歩いて4時間の道のりをハーレムまで帰った。
段々寒さが厳しくなり街角に立つのも限界が来た。
当然食い物もなくなる。
それで断食の状態が続いた。
1週間が過ぎ、
2週間が過ぎた。
水以外には何も口にしていない。
「もうこれで餓死してしまうのかな」と本気で思った。
身体は骨と皮のようにガリガリに痩せた。
やがて、
何も食べずに3週間が過ぎた。
ところが身体が元気なのである。
寒さも気にならなくなって来た。
毎日、
朝起きるとセントラルパークをマラソンで走った。
体中にエネルギーが漲って、
動かずにはいられなかったのだ。
よく、
ハンスト等で、
1週間断食しただけで病院に運びこまれる人がいる。
あれは気持ちが負けているからだ。
食べないと生きて行けないという思い込みから、
フラフラになって倒れてしまう。
精神がしっかり立っていれば、
1ヶ月間何も食べなくても身体は元気でいられる。
それを私は実体験で知っている。
断食の効能には三つあると断言できる。
一つは、
腸の中の掃除だ。
普通の健康人でも腸の中にはたくさんの宿便が溜っている。
この宿便から毒素が出て、
免疫系を壊し、
病気になる人もいる。
腸の中の宿便が全部出てしまっても、
まだ胎便という赤ちゃんの時におっぱいを飲んでつくられた便が腸壁にへばりついている。
英語ではミューカスという。
どす黒い緑色をしていて刺激臭のある宿便が出てしまうと、
軟便のような胎便が出てくる。
最後に白い便が出る。
これがミューカスだ。
これが全部出てしまうと腸内は完全に奇麗になる。
次に、
身体の内蔵には重力の法則に従って、
内臓の下の脂肪層に食品添加物等の科学的に合成された毒物が蓄積されている。
これは長い断食をしていると、
内蔵の自己浄化作用が強く働いて、
脂肪の中に溜った毒物を排出してくれる。
特に、
脂肪肝のような内蔵脂肪に溜った毒素は排出させるのが困難だが、
断食はこれを解決してくれる。
最後に、
自分の欲望の掃除ができるということが一番重要なことだと思う。
人間は欲深き存在だ。
食い物が欲しい、
金が欲しい、女が欲しい、
男が欲しい、
酒やタバコが欲しい・・・。
欲望には限りがない。
どこかで欲望をマネージメントしないと人間は堕落する。
断食をすると食欲がドット湧いてくるが、
1週間我慢できると食欲は消える。
食欲は人間の生存のための一番原始的な欲望である。
この食欲を制御できるようになると、
他の欲望も消滅してしまう。
心が澄んで奇麗な気持ちで過ごせる。
米国から帰国し、
インドに渡って本格的なヨガの修行をした。
この時も断食の修行には、
何の苦痛を感じることもなかった。
すでに身体が断食の歓びを覚えていてくれたのだ。
インドから帰ってから、
ヨガ教室と断食道場をやった。
断食の志願者には全て一緒に付き合って、
私も断食をした。
あの頃の私は一年間ほとんど食い物を食べずに生きていたように思う。
病気の人も何人も断食で病気を救った。
進行性の癌の人も断食で完治した。
重い糖尿病の人も断食で完治した。
日本のグルメブーム等、
その貪欲な飽食ぶりには腹が立つことがある。
世界の低開発国では2秒に一人の割合で餓死している人たちがいる。
食べるものがなくても生きてきた私は、
贅沢が嫌いだ。
今でも一日に粗末な食事を一度だけ食べるようにしている。
そして、
思いついたら2週間程度の断食をする。
実に清々しい気持ちになる。
私は自信を持って皆さんに断食をお勧めしたい。
日本の食文化はある意味で狂っている。
貧しい国の、貧しい子供たちのために自分の食べる分を分け与える気持ちで断食をしようではないか。
先進国が、
世界中の国が、
そして、
みんなが世界の資源を分かち合えれば、
世界から飢餓は一掃される。
私は祈るような気持ちで、
そういう日が来ることを待ち望んでいるのだ。
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